映画「ヴィレッジ」
M・ナイト・シャマラン監督が、古き良き時代の小さな村を舞台に描いたスリラー。
この監督といえば以前紹介したシックスセンスが代表作で、そこからじわじわとスポットが当たらなくなったと言われているが、このヴィレッジもまた良作なのである。
その村で暮らす人々は誰もが純粋な良心を持ち、家畜や作物を育てながら慎ましく生活していた。人口わずかの小さなこの村を年長者たちが取りまとめ、規則を作り、定期的に話し合いの場を設け、村の形や秩序を保っていた。
この村には不思議な掟がある。
村を囲む大きな森には決して入ってはならない。なぜなら森にはどう猛な怪物が住んでおり、お互いの領域を荒らさないという協定が破られると怪物たちはこの村を襲いに来るのだ。そのため各家には身を守るための地下室が存在する。
そしてもう一つ。
年長者の住む家には必ず金庫のような箱があり、その箱を誰も開けてはならないというもの。
この二つの掟を村の若者たちは子供の頃から言い聞かせられており、怪物を恐れて森に足を踏み入れる者はなかった。
物語の前半は平穏な空気のまま続いていく。寡黙で誠実な青年ルシアスと、人と違う洞察力をもつ盲目の少女アイヴィーを中心に、村人たちの暮らしや心の交流が描かれつつ、森に住む怪物の気配が次第に強まる一方で謎は深まるのであった。
そんな中、村に事件が起き物語は急展開する。
アイヴィーとの婚約を報告したルシアスが、その翌日に刃物で刺され命に関わる大怪我を負ってしまう。
医者の診断によると助かるには薬が必要で、その薬は森を抜け町へ行かなければ手に入らない。
婚約者のルシアスを救いたいアイヴィーは意を決して、町に行くために森を抜ける許可を、年長者たちに求めるのだった。
後半では恋人たちの結末を見届けると同時に、この村の秘密を知ることになる。
終盤にはM・ナイト・シャマラン監督お得意の大どんでん返しが待っている。
高校生で始めてこの映画を映画館で観た時は、あまりの展開にしばらくキョトンとしてしまった。
映画のストーリーだけでなく、アンドリュー・ワイエスの絵画を思わせる古き良きアメリカの自然の風景や、映画全体の空気感を見事にまとめるサウンドトラックもこの映画の大きな魅力だ。そういった点にもぜひ注目して観ていただきたい。
また、このあたりの映画音楽についてものちに紹介したいと思っている。