さなぎビルディング
僕は建造物に関心がありますが、建築全般に興味があるわけではありません。
関心の薄い建築で言うと、有名建築家による造形美と機能美を兼ね備えた洗練された建築。その素晴らしさを理解することはできますが、心を持って行かれたことは無いのです。
高層ビルが次々に建設されるこの時代、建設途中のビルをよく見かけると思います。
僕はよく、この状態で建設を止めてほしいなどと思ってしまいます。つまり完成させないでほしいのです。
剥き出しの鉄骨とその奥の暗闇。
完成の状態とはまた違ったイビツな造形のリズム。
設計者が目指す整理整頓された「デザイン」とは全く関係のない、おどろおどろしいさなぎの中身のような姿に心がざわつきます。
現在建設中のこちらのビル。
完成予想図が張り出されているのですが、そのシンプルな造形とガラス張りの清涼感とは程遠い、複雑かつ重量感のある姿です。
こちらは何年か前に撮ったもの。
巨大なビルの建設途中ですが、鉄骨の状態だとかなりの圧迫感があります。
もうとっくに完成しているはずですが、その姿はまだ見に行っていません。
こちらはマンションの建設現場ですが、ちょうど全体の鉄骨が組み上がった時の様子です。
床や天井が無いせいでマンション全体の容積がよくわかります。こうして見ると、約20世帯分とはいえ人の居住空間はこれだけ巨大なのです。
そしてこのようなマンションやオフィスビルが、ゾッとするほど沢山存在します。日本にどれだけ沢山の人が生きているかが実感できる上に、その中のたった一棟のマンションでさえもこれほど精密に綿密に造られてきたのです。
この途方もない積み重ねを想像すると頭がボーッとしてきます。