タワークレーン②
僕の自宅の向かいには、最近新しく建てられた巨大なマンション群が建ち並んでいます。
もとの古い団地を取り壊し、数年がかりでマンションは完成しました。
このような大きな建物の建設には必ずタワークレーンが稼働するものです。
家の向かいに随分長い期間巨大なタワークレーンが佇んでいたため、僕は毎朝毎晩そのタワークレーンを愛でながら過ごしました。
深夜の建設現場で、ライトも消えて眠るように動かないクレーンの姿はいささか不気味さを纏っています。
ある日、クレーンが2機追加されました。
クレーンは組み立て式になっており、トラックで運ばれたのちに現場で組み立てられます。
そして組み立てるのも無論、クレーンを使って行われます。
では現場で1番最初に出現したクレーンはいったいどうやって組み立てたのか。
と思うところですが、タワークレーンはクレーン車が組み立てるので、卵が先か鶏が先かみたいなことにはなりません。
2兄弟から4兄弟になり、スムーズに鉄骨などの資材を組み上げ、しだいにマンションが完成しました。
なかなか家の目の前で毎日4機のクレーンにお目にかかれるなんてそうそう無いチャンスでしたが、いつまでもボーッと眺めていてはご近所から気持ち悪がられるので、通りすがりに目をやる程度しか見ることはできませんでした。
鉄骨や大まかな外壁が組み上がった時点で、4機のクレーンはいつのまにかいなくなっていました。真新しいマンションが出来上がったあとは、煌びやかな外観を眺めながらもなんだか呆気ない心持ちでいます。
つい先日、隣町のビル建設現場に4機のクレーンが空高くそびえていました。
もしやあの4兄弟か!?などと思いつつしばらく下から眺めていました。
曇りのダークグレーの夜空に真っ赤な航空障害灯が灯り、美しいコントラストをつくっていました。
いま写真を載せてみて気が付きましたが、柱の構造が違いました。向かいのマンションのクレーンよりこちらのほうが巨大なタイプのようです。
あの4兄弟もおそらくまたどこかの夜空の下の建設現場で、静かに佇んでいるのでしょう。