美術系高校②
今回も高校時代のお話。
前回の記事
高校入学当初、女子たちのファッションの振り切り具合に衝撃を覚えましたが、もう一つ驚いたのが美術の授業の多さでした。
まぁ美術系なので当然ではありますが、一週間の授業の3割以上が美術なのです。
月曜日
1限目、国語
2限目、数学
3限目、美術
4限目、美術
5限目、英語
6限目、地理
火曜日
1限目、美術
2限目、美術
3限目、体育
4限目、生物
5限目、美術史
6限目、英語
他の教科のスケジュールは定かではありませんが、このくらいの比率で毎日美術の授業があり、毎日絵を描いていました。
クラスメイトたちはファッションのみならず、美術に対する熱意やプライドも並外れていました。
中学時代から予備校に通い、美術校の実技対策に明け暮れただけあってデッサン力はバリバリです。
色々な美術作家も知っており、友達と情報共有しつつ知識比べに闘志を燃やすタイプの人が多かった印象です。
僕はその熱意と闘志に満ちた学びの場のムードに気後れし、初めはなかなか居場所が見つけられずにいました。
数少ない男子生徒たちで何となく隅っこに寄せ集まって、女子勢に圧倒されながら遠巻きにして眺めていました。
しかしその闘志は僕にとって大きな刺激になっていきました。
やはり発想や感覚が並外れているのです。
驚くような色使いもあれば、見たこともない斬新な発想など、次々に強烈な作品を彼女たちは生み出していきます。
本人たちも訳がわからず直感に従って手を動かしているし、第三者が見ると尚更わけのわからない表現もありましたが、とにかくひとつひとつの作品が「カッコいい」のでした。
彼女らには一生追いつけない、そう確信していました。
しかし3年間ともに美術を学んでいく中で、自分にも様々な気付きがありました。
突飛な発想や独自の視点というのは選ばれし者の特殊能力のようなものだと思っていたのですが、自分の思考を注意深く分析しながら日々過ごしてみると、案外自分も色々と複雑な感情を抱えているし、自分でも意外なアイディアが顔を出す瞬間があるのです。
気が付いていないだけで、実は誰もが興味深い思考と体質の持ち主なのです。彼女たちは高校1年生にして、きっとそのことに気が付いていたのかもしれません。
高校を卒業してしばらく経ちますが、あれだけ美術に情熱を傾けていた彼女たちの中にも美術から離れてしまった人が沢山います。
おそらくは今頃、各々の分野でその熱意が光っているのでしょう。情熱さえあればどんな場所でも大成していけるものだと思います。
そして引き続き美術業界にいるクラスメイトの中にはすでに売れっ子として名を馳せている人もいます。僕も頑張らねば…
3年通して、男子チームは押されっぱなしだった気がします。
高校生にもなると男子は随分と大人の見た目に近づき、頼もしさも出てくるものだと思いますが、やっぱり女子優位の世界でした。
決して性格がキツいとかいう話ではありません。穏やかで人当たりも良くおしとやかですが、根っこの強さの点で僕らは決して敵わない気がします。
少し前にクラスの何人かで同窓会を催したのですが、みんな特に老けることもなく当時のままといった印象でした。
大人の年齢に達してから随分経つので、当時のようなメラメラはさすがに露呈していませんでしたが、やはりどこか内に秘めた熱が感じられました。
彼女たちにはこのまま突っ走ってもらいたいな。
僕も頑張ってついて行きます。
美術系高校
Facebookで高校時代の友人が活躍している記事が流れてきて懐かしく思い、今回は高校の頃について書こうと思います。
僕が通っていたのは公立の美術系の高校で、とても少人数の学校でした。
入試では学科と実技の試験があり、高校入試と言えどそれなりの画力が問われます。
デッサン力が特別あったわけではなかった僕は恐らくギリギリラインでの合格だったのだろうと思います。
一学年に2クラスしか無く、クラス替えはありません。男女比は圧倒的に女子が多いという変わった形態の学校でした。
僕のクラスの男子は40人中6人。入学当初は何かの間違いで女子校に紛れ込んでしまったような気分でした。
その上うちの高校には制服が無く、ファッションに関する禁止事項が全くありませんでした。
中学までの厳しい風紀管理から解放された女子高生は、威圧感抜群のぶっ飛びファッションで毎日登校して来ました。美術系ということもあり各々が個性の比べ合いに命をかけ、教室は原色の洪水のようなド派手女子たちに溢れていたのです。
普通の高校なら金髪にしただけで相当目立ちますが、うちの高校ではそれは大人しい方です。
緑と金のツートンカラー、姫カットで毛先だけショッキングピンク、パーマのかかったモヒカン女子、銀髪坊主女子。
補導されても文句言えない頭です。
当然その派手な頭に釣り合う、派手な服装をしています。
右脚は黄色、左脚はピンクのタイツ、平野ノラにも勝てそうな真っ赤なジャケット、もう穴を開ける場所が見つからないほど無数のピアスに埋もれた耳。
それでいて彼女たちは至って普通の、むしろ穏やかで奥ゆかしいタイプの女子でした。
他校のちょっと制服を着崩した茶髪女子高生にビクビク怖がっていました。自分たちがどれだけ近隣住民を怖がらせていたかも知らずに。
とまぁ、そんな特殊な顔ぶれと歪な環境の中で美術と一般教養を学ぶという、刺激的な3年間を過ごしました。
今回はここまで。
また続きを書きます。
都市の溝
東京駅近辺は僕の散歩テリトリーの一部です。
立ち並ぶオフィスビル、疲弊しきった駅構内、ライトアップされた消費者金融の看板。
そのような現代社会の情景を見つけに町へと繰り出します。
今回は「溝」に焦点を絞ってみました。
表向きの煌びやかさや、ハツラツ感とは対極にある、グッタリ感や喫煙所感、事務的で空虚な気配が漂う都市の溝を探す癖が僕にはあります。
路地裏のような余白のスペースに存在することもあれば、工事中に一時的に現れる空間もあります。
空き地のようにもともと何かがあった痕跡を残す抜け殻的スペースではなく、「溝」として作られた空間であることが大事なのです。
空き地は空き地で好きですが。
工事や建設現場の溝は別ですが、ビルの隙間などに存在する溝は古いものが多く、雨風に長年さらされた質感をしています。
その場所に長く残っているということは、役割の有る無しに関わらず必然的な存在である証拠です。
そのような都市風景の中の微妙なバランス関係が垣間見える瞬間がおそらく好きなのでしょう。
美大受験②
今回は僕が美大受験をしていた、浪人時代のお話。
パート1はこちら
http://rileyy.hatenablog.com/entry/2018/04/23/214201
僕は高校3年生、一浪、二浪と、予備校に3年間通いました。
東京の繁華街にひっそりと佇む美大受験予備校と家との往復の日々でした。
一般大学の受験をした経験がないので詳しいことはわかりませんが、美大受験の浪人生は基本的に朝から夜まで延々と絵を描き続けます。
一度やってみるとわかるのですが、朝から晩まで集中力を切らさずに絵を描き続けるというのは非常に体力を要します。それも毎日毎日描いて、描き上げたものを講師に講評してもらい、ダメ出しを食らい、翌日また次の絵を描く。勉強というより完全に修行です。
講師たちも美大受験での浪人を経験しているので、その厳しさを熟知しているだけにそう易々とは褒めてくれません。
それに僕の居た科には正解が存在しないので、何枚描いても酷評を食らい、改善策もわからずまた描き続けるという時期もありました。
一般大受験生との大きな違いは、予習の形が大きく異なるという点ではないでしょうか。
絵の勉強にも予習が必要です。しかし僕の科は先ほど言ったように答えがないので、教科書を見て予習というわけにはいかないのです。
僕らにとっての予習は、日常生活の中からふとした感動を得ることです。
受験生とは言えど表現者でなければならないので、表現の素が必要なのです。
朝の電車の車窓から見える広告塔、薄汚れた壁と選挙ポスターのコントラスト、治りかけのカサブタの質感、日没直後の空の色。
日々の中には制作のヒントやきっかけが無数に散らばっており、自分のアンテナで見極めてインプットする。それが僕らにとっての予習でした。
予備校からの帰り道に、特に目的もなく町を歩き回りました。どこかに自分のヒントになる物や出来事が潜んでいるのではないかと。見つけようと思っているとなかなか見つからないものですが。
同い年の浪人生や年下が自分より先に合格するという経験も沢山しました。
しかしその当時は悔しかったのですが、今思うとそんなことはどうでもいいと思えるようになりました。
あくまで受験も大学も通過点。その期間を各々がどんな形で過ごしたかということ以外には差はないのです。
自分と同じように3年という長い期間、一喜一憂を共に味わった予備校仲間とも、もはややり取りは無くなりました。それは付き合い下手な僕の性格の問題かも知れませんが、あれだけ近くで同じ時間を共有した仲であっても、受験が終わってしばらく経つと何となく通過し風化してしまう、そういう性質のものなのかも知れません。
久々に声をかけてみようか。
予備校生活が終わって10年。お互いに当時の恥ずかしエピソードなんかを握り合っているので、飲めば相当盛り上がるに違いないです。
画像は2浪の時の石膏デッサンの一部分。
形態が狂っているので首から下はお見せできません。(笑)
タワークレーン
今日も制作の合間にちょっくら散歩をして参りました。
最近は日常風景の中から僕が気になった物体について投稿することがありますが、今回もその類です。
タワークレーンをご存知でしょうか?
マンションや高層ビルの建設の際に必ず現場に現れる脚の長い謎のクレーンのことです。
一本足で地面からそびえ立ち、重厚な鉄骨などを高所まで持ち上げるための重機です。
子供の頃からあの迫力ある佇まいに目が行っていました。
子供心には特に用途もわからないあの物体が、地面からそびえ立ち、夜には不可解な赤い照明が点滅し、しばらくすると跡形もなく姿を消していた記憶があり、どことなく正体不明な巨大生物のようだと認識していました。
ちなみに操縦席には電子レンジやトイレが完備されており、高所で長時間にわたり操縦する作業員がある程度快適に過ごせる設備が整っているそうです。